中央葡萄酒退職の挨拶(2020.5.20)
- redvine
- 2020年5月20日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年10月9日
退職のご挨拶
社員の皆さん。私は本日付けで中央葡萄酒株式会社を退職することになりました。長い間、皆さんのお世話になったことを感謝し、コロナ禍により全体朝礼が開かれないことに鑑み、書面でご挨拶をさせていただきます。
1996年4月に49歳で入社し、最初から農場長という職責に付けていただき、それまで全く縁のなかったワイン用ブドウ栽培に取り組んだわけですが、本当に楽しくやりがいのある仕事でした。何よりも、山梨の美しい自然に囲まれた畑で働き、良いブドウを作るために努力することは、人間的労働の本質を体感させてくれ、自然と人間の本源的関係に気づかせてくれました。働くこと自体が楽しくて、その生産物であるワインが世の中の人々を楽しく元気づけるのですから、これほどやりがいのあることはありません。
それだけではありません。他でもない1996年に三澤社長が率いる中央葡萄酒に入社したという偶然の事実が、日本のワインづくりの歴史における巨大な転換に立ち会わせてくれ、その中でなにがしかの役割を果たすという、奇蹟のような体験を味合わせてくれたのです。入社と同時に鳥居平農園の建設に取り組み、鳥居平や菱山の甲州栽培農家の組織化を始め、2002年からは三澤農場建設を担うという仕事の歩みは、三澤社長が主導して、「畑から始まるワインづくり」の王道を進み、ワインの品質を画期的水準に引き上げ、甲州ワインを先頭に世界に進出するという日本ワインの歴史そのものでした。
さらに、2007年に三澤彩奈栽培醸造部長が帰国・入社して、三澤農場のワインづくりをさらなる高みに引き上げる先頭に立ってからは、その現場における実践を仲野さん、潮上さん、小島さんら後進の方達に託し、私はグレイス栽培クラブの活動に力を注ぐことにしました。幸いにして、13年間で500人を超える方々が入会し、現在も200人近い会員がグレイスワインのコアな支持者・貴重な栽培ボランティアとして貢献してくれるようになったこと、さらに会の活動が会員の皆さん自身の人生に豊かな意味をもたらすようになったことは大いなる喜びです。
私は、学生時代以来30年にわたって、社会変革を目指す運動=組織に没頭した上で、その破産を痛感して離脱した過去をもっています。その経験から、「自分の人生を組織に没入させる」生き方を否定し、「将来の理想のために現在を犠牲にする」考え方を拒否し、いま現在を「楽しく生きる」ことと「意味のある仕事をし、成果を上げる」ことの両立を追求する生き方をしようと固く決意しました。
そのため、中央葡萄酒に入社し経営者や会社のあり方が本当に素晴らしいと確信しつつも、私は頑ななまでにその姿勢を貫こうとしたのです。その結果、25年にわたる会社員生活の中で、自分を優先させる傾向を拭えず、会社や社員の皆さんに多くのご迷惑をおかけしただろうことを深くお詫びします。
この度、7月に74歳を迎える直前に退社する運びになったわけですが、私自身は幸い、体力・気力の衰えを感じていません。そこで今後は、栽培クラブ出身でブドウ栽培農家に転身しようとする二つの家族を応援して、私自身が居住している明野の地で、共同して農園を開設することにしました。これからは、人生最後の「もう一仕事」に全力を投入するつもりです。
最後に、いわくつきの身を承知で雇用していただいて以来、三澤茂計社長から受けた数々のご恩・ご厚情に心からの感謝を捧げます。
また、三澤彩奈部長がリードされる今後の中央葡萄酒のさらなる発展を祈念しています。
そして、社員の皆さんのご健康とご多幸をお祈りします。
2020年5月20日 赤松英一
Comments